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話題となったワセリンでアトピー予防、「予防よりも治療」との声が多数。1/1

アトピー性皮膚炎モデルマウスを使った研究で、アトピー性皮膚炎発祥のメカニズムが解明され、発症の予防方法が科学的に発見されました。 発表したのは、理化学研究所 統合生命医科学研究センター 疾患遺伝研究チームの共同研究グループです。

国内におけるアトピー率の現状

国内におけるアトピーを始めとするアレルギーの患者数は年々、ジワリジワリと増えています。

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厚生労働省;統計患者数調査,H28.2.3

アトピー性皮膚炎の患者における年齢構成の割合は、0 ~ 44 歳が全体の 8 割を占める発表となっています。中でもとくに多いのは 0 ~ 19 歳代です。

アトピー性皮膚炎は、日本を含める先進国の若い世代でよく見られる皮膚の炎症疾患であり、遺伝、環境の複合要因によって発症すると考えられています。

遺伝的に皮膚バリア機能に障害がある人で アトピー性皮膚炎が発症しやすいことから、「免疫グロブリン(IgE,※1)」の増加によるアレルギー反応が問題だとみられてきました。
しかし、遺伝的背景をもつ人が、アトピー性皮膚炎をどうして発症するのか?という詳しいメカニズムは判明していませんでした。

  • 免疫グロブリンE(IgE)アレルギー性疾患の原因となっている抗体。極めて低濃度で血中に存在するが、アトピー性疾患や寄生虫感染で増加する。

チームは遺伝子変異を誘導させることにより、アトピー性皮膚炎のモデルとなるマウスを新たに開発しました。
開発されたモデルマウスにおけるアトピーの発症メカニズムを解明し、発症の予防方法を発見しています。

おこなわれた研究の概要

50家系3,000匹のマウスを解析した結果、アトピーを自然発症するマウスを特定した。
特定されたマウスは、たとえ清潔な環境で飼育しても、生後 8 ~ 10 週でアトピーを発症した。

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  • A.野生型マウスとアトピーの発症が特定されたマウスの外見。
  • B.アトピー性皮膚組織の顕微鏡画像。左の野生型に比べて、右のSpadeマウスでは、表皮の肥厚と真皮への炎症細胞浸潤が起こっている。

各スケールバーは100マイクロメートル(μm、1μmは100万分の1メートル)。


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  • C.アトピー性皮膚炎発症タイミングを示したグラフ
    青い丸は野生型、赤い丸が特定されたマウスを示す。
    特定されたマウスでは、多段階的にアトピー性皮膚炎が進行していることが分かる。
  • D.血中ヒスタミン値の変動を示したグラフ
    青い丸は野生型、緑色の丸はヘテロ型、赤い丸が特定されたマウスを示す。
    Cと同様に、血清ヒスタミン値が段階的に上昇している。つまり、特定されたマウスでは、多段階的にアトピー性皮膚炎が進行していることが分かる。

遺伝子マッピング手法で原因となる遺伝子座を特定、さらに、候補遺伝子の遺伝子配列を調べたところ、「JAK1」というアミノ酸配列に変異を起こす変異を発見した。

このJAK1を介した変異によって、シグナルが強く入り、アトピーが起こると確認することができた。
合わせて、JAKを阻害する薬剤を皮膚に塗ることでアトピーの発症を遅らせることができた。(※画像2)

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次に、遺伝的にアトピーを発症する背景だとされている皮膚のバリア機能の低下がみられているか調べたところ、
モデルマウスではアトピーを発症する数週間前からバリア機能が低下していることが明らかになった。

アトピーの発症は、皮膚のバリア機能の低下から起こると考え、それを改善するために、アトピーが発症する 4 週間前からワセリンを一日置きに塗ってみた。

すると、ワセリンによって、2 ヶ月以上、アトピーの発症を抑えることができた。(図3)

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  • ワセリンを塗った皮膚では、バリア機能が改善しているだけでなく、アトピー発症前の皮膚に炎症細胞が集まるのを防いでいることも明らかになった。

発症前からのワセリンを毎日塗った場合のアトピー性皮膚炎の発症頻度(左)と、耳のグラフ。赤色の○が無処置群オレンジ色の●がワセリンを塗った群を示す。

図2の場合と同様に、ワセリンを塗ることで、発症を予防できていることが分かる。

本研究のポイント】

アトピー発症前にワセリンを塗ることで、発症を延期、または予防できることが明らかになった。

人においても、皮膚のバリア機能が低下することで、アトピーが発症すると考えられている。

マウスにおいては、JAK1の活性型変異という遺伝素因を基にアトピーが発症されることが明らかになった。
この結果に基づく新たな予防方法の誕生が期待される。

モデルマウスを使用した本研究成果で、アトピー発症の素となる変異が特定されましたが、同じ変異を持ち、同じ環境に住んでいながら、アトピーを発症する人と発症しない人が存在します。

その違いが皮膚の問題なのか、免疫の問題なのか、遺伝的問題なのか、環境の問題なのか、複数の要因が考えられますが、人においてそれを明確にすることは困難を極めます。

予防方法ではなく、治療方法を、との声

アトピーの予防にワセリンがいいということは、前から言われていたことなので、予防方法ではなく治療方法を知りたいという声をチラホラ目にします。

アトピーの治療でステロイドはできたら使用したくない」という人も多いので、新しい治療方法の開発には、やはり注目が集まります。

世の中には複数のアトピー治療法が出ていますが、いかんせん、完治には長い年月がかかってしまうので、自分が続けられそうなやり方を選ぶことが大切ではないでしょうか。最後に、アトピーを改善するための基本的なことをいくつか掲載しておきます。

アトピーを改善するための基本的な方法】

● ジャンクフードなどの添加物を避け、保存料が入っていないオーガニックなものを食べる。(できるだけ賞味期限が短いもの)

アトピーの完治には長い年月がかかるので、自分が続けられそうなことを選ぶ。

サーフィンなど、海に入るようなミネラルを得ることのできる運動をする。

ヨガなどのストレッチをする(1日5分程度

クリームは、保湿力が高いもの、肌のターンオーバーを促進するものを選ぶ。


『出展』