ニュース

神の手に代わると呼ばれる「がん重粒子線治療」。現在の状況は?1/1

「がん重粒子線治療」をご存知でしょうか。その特徴を一言で表現すると、「“神の手”に代わる究極の低侵襲治療」です。(外科出身の土屋了介・元国立がんセンター中央病院院長)

ec7fbcd490a069426f384bda757fd119_s.jpg

がん重粒子線治療の強みは、線量の集中性が高く、細胞致死効果の高い重粒子線を利用して、がんの位置、大きさや形状に合わせて 線量を調節し狙い撃ちすることができることです。

 がん治療に、重粒子線を用いることの強み

電荷を持つ粒子線は「ある深さにおいて最も強く作用し」、「一定の深さ以上には進まない」という2つの特性がありますので、重粒子線などはがん病巣にその効果を集中させることができ、なおかつ、がん病巣より深いところには影響を及ぼしません。

手術をしないので、身体に優しいうえ早期の社会復帰が望めるというQOL(生活の質)を重視した治療法のひとつです。
がん重粒子線治療には、「加速器」という大型の装置が必要なのですが、現在、全国への普及展開を目指して小型加速器の開発が急速に進められています。

ちなみに、日本で使われている粒子線は、「陽子線」と「炭素イオン線」の2種類になります。

また、通常の放射線治療では平均して、30~40回の照射が必要となりますが、放射線医学総合研究所における重粒子線の平均照射回数は 13回と短いのも、特徴のひとつです。

重粒子線治療が、得意とするがん種

  • λ 局所に留まっているがん
  • λ 悪性黒色腫のように通常の放射線が効きにくいがん
  • λ 手術の難しいがん

※ 胃や腸のように不規則に動く「臓器にできたがん」や、白血病のように全身に拡がる「血液性のがん」、「転移が広範囲に進んだがん」などには、臓器に孔を開ける危険性などがあるため、適用できないとされています。

がんに対しておこなわれる放射線治療

がんにおける放射線治療は、1994年に放射線医学総合研究所のHIMACで開始され、現在は 20年以上の歴史があります。
1957年から 35年も研究してきたアメリカを上回り、日本が技術的に世界をリードしてきました。

がん重粒子線治療の費用

重粒子線治療は、2003年に高度先進医療として 一律 314万円で混合診療の提供が認められました。

高度先進医療は、健康保険や高額療養費制度による助成などを一切受けることができませんが、治療に伴う入院費や薬代、検査費用などは勿論保険適用対象ですし、一定額を超えれば高額医療費制度が利用できます。また、確定申告により医療費控除の申請もできます。

今後、先進医療Bになる可能性も

2012年には、専門家らが一部のがんへの保険適用を訴えましたが、厚生労働省は費用対効果などの理由で、これを退けています。

2015年には『一部のがんを除いて、既存の治療法に対して優位性を示すことができなかった』という報告があげられました(日本放射線腫瘍学会の報告)。

これを根拠として、「先進医療B(※)に変えるべきだ」という議論が起きましたが、今年1月の先進医療会議にて、4月から2年間はとりあえず、先進医療A(※)として扱うと決まっています。

  • λ 先進医療A第2項先進医療)…従来の先進薬事法の承認・認証・適用のあるもの。希望する患者の大多数が受けられるもの
  • λ 先進医療B第3項先進医療)…高度医療で、薬事法の承認・認証・適用のないもの。患者の条件を厳密に定めており、「高度医療評価会議」による安全性と有効性の確認が必須であるもの

軟骨部腫瘍には、保険適用に

今年1月の先進医療会議で、他に治療手段がないことから、手術不能の軟骨部腫瘍に関しては保険適用されることになりました。

重粒子治療施設「i-ROCK」が、2月から治療を開始する i-ROCKアイロック、Ion-beam Radiation Oncology Center in Kanagawa)というのは、日本国内5か所目となる重粒子線治療施設で、神奈川県の重粒子線治療施設の略称です。

ほかに治療を受けられる施設は現在のところ下記の4箇所となっています。

  • λ 群馬大学医学部附属病院 重粒子線医学センター(群馬県)
  • λ 放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター(千葉県)
  • λ 兵庫県立粒子線医療センター(兵庫県)
  • λ 九州国際重粒子線がん治療センター(佐賀県)

ちなみに、兵庫県立粒子線医療センターの登録患者数は、平成15年に0人だったものが、平成22年に300人と増加し続け、現在は270人となっています。


「参照」