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タバコは肺がんの原因にならないは嘘。「ほぼ確実」から「確実」へ明記変更がされる1/1

日本人の非喫煙者を対象とした受動喫煙と肺がんとの関連について、複数の論文を統合、解析する「メタアナリシス研究」の結果が、国立がん研究センター・がん対策情報センターから公表されました。 受動喫煙のある人は、ない人に比べて肺がんになるリスクが約 1.3 倍で、国際的なメタアナリシスの結果と同様であることが示されています。

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【研究背景】

能動喫煙と、肺がんの関連」については、多くの調査・研究により、リスク要因として確実であることが明らかになっています。

日本では肺がんの死亡のうち、男性で 70%、女性で 20%は喫煙が原因と考えられているだけでなく、肺がん以外のがんとの関連も明らかで、がんの死亡のうち、男性で 40%、女性で 5%は喫煙が原因と考えられています。

受動喫煙と肺がんの関連については、1981 年に平山雄(国立がんセンター研究所疫学部長,当時)が、世界で初めて報告。
その後、研究が蓄積され 2004 年に国際がん研究機関(IARC)が「環境のたばこ煙の発がん性を認める」に至っています。

日本人を対象とした研究もこれまでに多数発表されており、当センターによる多目的コホート研究からも報告されています(International Journal of Cancer 2008;122: 653-657)。

しかしながら、肺がん全体に関して個々の研究では、統計学的に有意な結果が得られていませんでした。

日本人を対象とした科学的根拠に基づくリスク評価が「ほぼ確実レベル」にとどまっていました。

その理由は、非喫煙者の肺がんは頻度が低く、受動喫煙によるリスク増加も 1.3 倍程度と、能動喫煙に比べれば小さいため、個々の研究では検出力が低く統計学的に有意な結果が得られなかったことであると考えられます。

【研究方法】

本研究では、日本人の非喫煙者を対象に受動喫煙と肺がんの関連を報告した 426 本の研究のうち、適用基準を満たした 9 本の論文結果に基づきメタアナリシスを行いました。

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解析方法

① 各論文について抽出されたリスク推定値から代表的なものを選び、すべての論文を統合した相対リスクを算出。

② 研究デザイン、出版年、交絡因子の調整有無で層別して同様に統合相対リスクを算出。

③ 出版バイアス(関連を認めた研究が選択的に出版される傾向)があるかどうかを統計学的に検討し、出版バイアスを補完した場合に統合相対リスクがどう変わるかを検討。

【研究結果概要】

日本人を対象とした疫学研究のメタアナリシスにおいて、受動喫煙と肺がんとの間に統計学的に有意な関連が認められた。

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  • 受動喫煙による相対リスクは約 1.3 倍で、国際的なメタアナリシスの結果と同様であった。
  • 研究デザイン、出版年、交絡因子の調整有無によって層別してもほぼ同じ結果であった。
  • 出版バイアスは統計学的に有意ではなく、出版バイアスを補完しても結果は変わらなかった。

「日本人のためのがん予防法」で、受動喫煙防止を明確な目標として提示

本研究結果を踏まえ、当センター社会と健康研究センターを中心とする研究班は、受動喫煙における日本人を対象とした科学的根拠に基づく 肺がんのリスク評価を「ほぼ確実」から「確実」にアップグレードしました。

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これに伴い、日本人の実情に合わせ喫煙、飲酒、食事、身体活動、体形、感染の 6 項目でがん予防法を提示しているガイドライン「日本人のためのがん予防法」においても変更があります。

他人のたばこの煙を「できるだけ避ける」から“できるだけ”を削除し「避ける」へ文言の修正をおこない、受動喫煙の防止を努力目標から、明確な目標として提示しました。

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日本人における受動喫煙の肺がんリスクは、これまでの個々の研究では統計学的に有意な関連が示されていませんでしたが、本研究で複数の結果を統合したことで、リスクを上げることが「確実」であることが科学的根拠をもって示されました。

日本人のがん予防策を考える上で、受動喫煙防止も禁煙同様に、個人および公衆衛生上の目標として取り組むべきであると言えます。

さらに、受動喫煙は肺がんだけでなく循環器疾患、呼吸器疾患、乳幼児突然死症候群などにも影響することが科学的に確立しています。

受動喫煙による健康被害を公平かつ効果的に防ぐために、世界 49 か国(2014 年現在)で実施されている公共の場での屋内全面禁煙の法制化など、たばこ規制枠組条約で推奨されている受動喫煙防止策を、わが国においても実施することが必要です。

written by 執事

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