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世界初!難治性スキルス胃癌の病態を解明。新規治療法の開発に成功する1/1

八代 正和 准教授(医学研究科 腫瘍外科学・難治がんTRセンター 副センター長)および、日野 雅之 教授(血液腫瘍制御学)らのグループは、予後が極めて悪いことで知られているスキルス胃癌の難治性の原因を世界で初めて解明し、その機序に基づいた新しい治療法の開発に成功しました。

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研究の背景

がん患者を治療によってどのくらい救えたかを示す「5年相対生存率」が62.1%となり、前回の調査に比べて向上したという報告書を今年7月に国立がん研究センターが公表しました。



このように医学の進歩により癌の治療成績は向上してきています。しかし一方で、依然予後不良な「難治性の癌」が少なからず存在することも事実です。
難治癌は増殖転移が速いため手術治療が困難であり、新しい治療法開発が急務とされています。


本研究により、スキルス胃癌細胞が正常骨髄細胞を癌組織へ誘導し、さらに癌細胞周囲に集合した骨髄由来正常細胞が癌細胞の強さを増加させ、この一連の過程がスキルス胃癌難治性の原因であることを明らかにしました。



さらに、スキルス胃癌細胞が産生する骨髄細胞誘導物質にシグナル阻害剤を投与することで骨髄細胞の癌への集積が抑制され、スキルス胃癌の増殖や転移を減少させ、治療することに成功しました。



本発明により、日本で死亡率の高い胃癌の中でも極めて難治性のスキルス胃癌の特効薬開発が期待されます。

研究の内容

 今回の研究により、以下の内容が明らかとなりました。

  • スキルス胃癌細胞の産生する塩基性タンパク質「ケモカインCXCL1」が、正常骨髄細胞を癌組織内に誘導していることが分かりました。
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そこから、この骨髄由来 間質細胞が間質細胞として、スキルス胃癌の進展を促進していると考えられました。
  • すなわち、スキルス胃癌細胞に含まれるCXCL1が骨髄間葉系細胞のCXCR2シグナルを活性化して運動を促進させ、癌組織に誘導していることを突き止めました(図1)。

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・スキルス胃癌細胞培養液を骨髄細胞に添加することにより、骨髄細胞の運動能や浸潤能が有意に促進された(a,b)。

・CXCL1/CXCR2シグナル阻害により骨髄細胞の運動能や浸潤能が抑制された(c)。

これらの結果により、スキルス胃癌細胞由来のサイトカインCXCL1が骨髄間質細胞の走化性を促進することが証明されました。


CXCL1あるいはCXCR2を阻害することで骨髄間葉系細胞の誘導を抑制できることを突き止め、CXCL1/CXCR2が、骨髄由来細胞誘導シグナルであることを世界で初めて明らかにしました。

この機序をもとに、CXCR2阻害剤を投与することで、スキルス胃癌腫瘍サイズや、リンパ節転移を有意に抑制し、スキルス性胃癌を効果的に治療し得ることをマウスモデルで見出すことができました(図2)。

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・スキルス胃癌マウスにおいて、CXCR2阻害剤(SB225002)を投与すると無治療に比し腫瘍サイズやリンパ節転移数が有意に少なく(a,b)

・さらに生存率が有意(p=0.039)に高かった(c)。

・胃癌組織の細胞分析をしたところ、無治療のスキルス胃癌は多くの骨髄細胞が誘導されていたが、CXCR2阻害剤を投与したスキルス胃癌には骨髄細胞がほとんど認められなかった(d)。

・CXCR2阻害剤投与によりスキルス胃癌細胞の増殖能が有意に低下した(e)。

これらの結果により、CXCL1/CXCR2シグナル阻害剤がスキルス胃癌治療薬として有効であることが証明されました。 


以上のことよりCXCL1/CXCR2が骨髄由来細胞誘導シグナルであり、治療薬として有効であることが明らかになりました(図3)。

このシグナルは胃癌のみならず膵癌においても認められることを確認しており、CXCR2阻害剤は難治癌の新規治療薬として有効であると考えられます。

現在は癌細胞を標的とした治療法が主流ですが、本発明は癌組織内の間質細胞誘導を標的とする点で、国内外にない新規性の高い難治癌治療法開発といえます。

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・スキルス胃癌細胞はCXCL1を介して正常骨髄間質細胞のCXCR2に作用し、骨髄細胞を癌組織に誘導する。

・癌組織に入った骨髄細胞は癌細胞の増殖や浸潤を促進する。つまり、スキルス胃癌細胞は正常骨髄細胞を呼び込み、自分に有利になるように味方にしていることが考えられる。

期待される効果

スキルス胃癌の難治性の原因シグナルが解明されました。
このCXCL1/CXCR2シグナルを標的にした治療薬が臨床開発されると、胃癌の治療成績が飛躍的に向上することが期待できます。

さらに、このCXCL1/CXCR2シグナルはスキルス胃癌のみならず、膵癌など他の難治癌においても認められることを確認しています。
従って、今回発見したCXCL1/CXCR2を標的とした治療法は多くの難治癌に対する新しい治療法として期待できます。

今後の展開について

※本研究は特許出願中です。

現時点では動物モデルを用いての非臨床試験の段階ですが、産学連携のもと新薬を開発し、できるだけ早く臨床試験を開始したいと考えています。

written by 執事

出典