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風邪薬は、がんの広がりを止めることができる。研究で立証される1/1

北海道大学の研究者らが、風邪薬に含まれている非ステロイド系抗炎症薬は進行性の膀胱癌の広がりを止めるだけでなく、抗がん剤の副作用を減少させることを発見しました。

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研究成果のポイント

風邪薬の成分の非ステロイド系抗炎症薬のフルフェナム酸は、膀胱がんにおいてアルドケト還元酵素を阻害することで転移をおさえ、なおかつ抗がん剤に対するがんの抵抗力をおさえることを発見。

将来、進行した膀胱がんの治療として抗がん剤に風邪薬のフルフェナム酸を併用することで膀胱がんを完治させることが期待される。

膀胱癌、は大きく2つのタイプに分けることができます。

5年生存率の高い「非筋肉侵襲性癌」と、5年生存率が低い「筋肉浸潤癌」です。

後者の筋肉に浸潤するタイプだった場合、シスプラチンなどの抗がん剤で治療されることが一般的ですが、時間の経過、もしくは耐性により他の臓器に転移する傾向があります。

研究手法

今回の研究では,ヒト膀胱がん細胞「UM-UC-3」を蛍光でラベルをして、マウスの膀胱に移植、膀胱がんモデルを作成しました(図 A)。

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移植から45日後に、肺転移・肝臓転移・骨転移が確認されたので、原発巣としての膀胱、転移先としての肺・肝臓・骨から、それぞれがん細胞を取り出して原発巣と比べ、転移したがん細胞でだけ高い発現を示す分子を「mRNA マイクロアレイ法」を用いて、約2万個のヒトの遺伝子を対象にして網羅的に検討しました。

その結果、転移したがん細胞では「アルドケト還元酵素(※1)」が増加していることを発見しました。

アルドケト還元酵素(※1)…たくさんの種類の酵素グループの総称

研究成果

マウスモデルの転移した膀胱がんではアルドケト還元酵素の量が増加していることを見出しました。

実際の膀胱がん患者さんの手術症例25症例の病理組織を調べたところ、転移先でのアルドケト還元酵素の増加を確認しました。
ヒトの体の中でもマウスモデルと同じことが起こることがわかっています(図 B)。

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 抗がん剤治療を行うと、がん細胞はほとんど死滅しますが、同時にがんの周りに炎症が起こり、リンパ球などから「インターロイキン1」という炎症性物質が放出されます。

このインターロイキン1の働きによって、がん細胞の中でアルドケト還元酵素の量が増加し、解毒作用が増すことでがん細胞が抗がん剤に対する抵抗性を獲得します。

加えてアルドケト還元酵素が、がん細胞の動きを司ることが実験でわかっています。

アルドケト還元酵素は、がん細胞の動きを高めることと、抗がんに対する抵抗力を高めることの2つの働きで、がんの悪性化の力を強めることがわかりました。

この酵素を阻害する「フルフェナム酸」が、がんの治療薬として有効であることがわかりました(図 C)。

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今後への期待

フルフェルナム酸は風邪薬の成分です。本研究によって、風邪薬などの安価な薬の成分でも思わぬ抗がん作用があることがわかりました。
フルフェナム酸を抗がん剤と同時に使うことで、膀胱がんの患者さんの予後を改善するための臨床研究が進むことが期待されます。