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悪性のがん細胞をカラダに負担をかけずに可視化することに成功【東京工業大学】1/1

東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系の近藤科江教授と口丸高弘助教らは、腫瘍組織に存在する悪性化したがん細胞を、カラダに負担をかけない方法で可視化することに成功しました。

低酸素誘導因子は、多くの腫瘍組織で活性化が認められ、「薬剤抵抗性」や「転移」といった悪性化に関わることが報告されています。

そのため、治療標的や診断マーカーとして有望な分子であると考えられています。

これまで、腫瘍組織における「低酸素誘導因子の活性化」をカラダに負担をかけずに可視化するためには、がん細胞やマウスに、前もって遺伝子を導入する必要があり、その場観察は困難でした。

開発された悪性化したがん細胞を可視化する「イメージングプローブ(※1)」は、外部から生体に血中投与した後、低酸素誘導因子が活性化したがん細胞内に蓄積され、生体組織を透過することのできる光(近赤外発光シグナル)を生成させることができます。

イメージングプローブ(※1)

 

悪性がん細胞で活性化する低酸素誘導因子に反応して、透過性のある近赤外発光シグナルを生成する手法。

 

イメージングプローブは、ユビキチン-プロテアソーム系(※2)による低酸素誘導因子の分解制御機構と、近赤外生物発光分子を組み合わせたタンパク質分子であり、血中に投与するだけで、高感度かつ、迅速に腫瘍組織の低酸素誘導因子を発光できた。

  • ユビキチン-プロテアソーム系(※2)…細胞内のタンパク質を特異的に認識して分解する機構。

イメージングプローブは、マウスを用いたがんの悪性化機構に関する研究を加速させるとともに、低酸素誘導因子が関わる多くの疾患研究に有用なツールとなります。

【研究概要】

イメージングプローブは、「低酸素誘導因子が活性化していない細胞」に取り込まれると即座に分解され、発光シグナルを生成しない。

が、「低酸素誘導因子が活性している細胞」においては安定化し、生体組織の透過性に優れる近赤外発光を生成する(図1)。

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イメージングプローブを、「皮下腫瘍が形成されたマウス」に尾静脈から全身投与したところ、従来の蛍光プローブに比べ、非常に短時間(投与後1時間)かつ高感度に、腫瘍組織の低酸素誘導因子が活性化した悪性がん細胞の可視化に成功した(図2)。

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これまでの蛍光イメージングでは膀胱、肝臓や腎臓といった臓器で、排泄過程にあるイメージングプローブが長時間にわたって強い光シグナルを発してしまい、高感度なイメージングが困難な状態だった。

が、大腸がんの肝転移病巣における低酸素誘導因子の活性を検出することが可能であることを示した(図3)。

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研究チームは今後、POL-Nイメージングプローブを用いて、発がんや転移過程における低酸素誘導因子の役割を明らかにしていく予定です。今後、多くのイメージング材料の開発に貢献することが期待されます。

written by 執事