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公にされていない「イレッサ薬害被害」の真実の姿 その①1/1

過去、肺ガン剤であり、夢の分子標的薬と謳われていた「イレッサ」が、800人以上の死者を出す薬害被害がありました。 「最高裁で被告側勝訴」という結末になっていますが、未だ公にされていない…いや、できなかったことがあります。 今回はそのあたりのお話を日本分子腫瘍マーカー研究会 工藤 憲雄さんにお伺いしていきます。

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イレッサの薬害被害を正しく知るための重要なポイント

上皮成長因子 受容体(EGFR チロシンキナーゼ)

細胞の増殖・成長を制御している上皮成長因子(EGF)を認識、シグナル(合図,信号)を伝達する受容体のこと。
EGFRは 上皮系、神経系、間葉系起源の多様な細胞に存在するチロシナーゼ型受容体である。


このEGFR受容体にEGFが結合すると、細胞の活性化・増殖が起こる。

このメカニズムは、正常組織における細胞の発達や維持などの調節に重要な役割を担っているが、
EGFRに遺伝子変異や構造変化が起きると、正常な抑制を無視して発ガン、およびガン細胞の増殖に関与することになる。

ー 分子標的薬「イレッサ」の薬害被害は起こるべくして起こったとお伺いしました。
詳細をお聞かせいただけますか。

ー 工藤さん

イレッサはあらゆる正常組織に薬害を起こします。
ドラッグラグを挙げて脅し、イレッサ薬害を正当化するなど、論外です。

肺ガンを発生する気管支肺胞系と、
正常な気管支肺胞系における上皮細胞のEGFRチロシンキナーゼの反応(カスケード)は、同じ機構になっています。

肺ガンのケースでは、制御機構に異常をきたし、正常な抑制を無視して増殖している、というだけの違いです。

イレッサはEGFRチロシンキナーゼを選択的に阻害する分子標的薬(肺ガン剤)と言われていますが、これは明確な表現ではありません。

正しくは、

ガン細胞と正常細胞、
両方のEGFRチロシンキナーゼを無差別に選択して阻害している

です。

したがって、イレッサ薬害被害は起こるべくして起こったものです。

一定数のガン薬物療法専門医が言うところの

分子標的薬はガン細胞には効果を発揮しますが、
化学療法薬のように正常細胞まで一緒に攻撃してしまうことはないのです。

という発言は、矛盾に満ちているわけです。

「分子標的薬 = 特定の分子を標的にする」という曖昧な表現が、致死的薬害の原因

「化学療法薬と違って分子標的薬は、ガン細胞が持っているある特定の分子を標的にするので、ガンに対する特異性が高いという特徴があります」

「だからといって、副作用がないわけではありませんが、化学療法薬の副作用とはかなり違うものになります」

このような言い方では、分子標的薬はガン細胞に対する特異性が高いので、正常細胞に反応しにくく副作用がとても軽いと捉えられるでしょう。

不思議なことに「分子標的薬が標的としているEGFRチロシンキナーゼは ガン細胞だけでなく、正常細胞も持っている」とは言わないのです。
理解していないのか意図して言わないのか疑問に思っていたが、イレッサ薬害訟訴で納得させられました。

副作用の本質を見向けなかった 大阪高裁判決(イレッサ訟訴)

大阪高裁裁判長は、「イレッサに有用性があり、副作用の警告方法にも欠陥はない」と、述べているが、論外です。
副作用の本質を見抜いていない被告側の思惑に誘導されて、裁判長が被告側勝訴の判決を下している。

原告側は金銭的保証による和解勧告を目的とし、副作用の本質を見極める努力をないがしろにしたが故、敗訴している。

イレッサが作用するEGFRチロシンキナーゼが、肺ガンを標的にしたものではなかったことをイレッサを開発した研究者本人が後年に供述しています。

ガン細胞がもっているキナーゼだけを、特定して阻害するキナーゼ阻害剤は存在していません。

現存するすべてのEGFRチロシンキナーゼ阻害剤は、あらゆる正常組織のキナーゼを阻害しています(New England Joernal of Medicine

なので、イレッサ(キナーゼ阻害剤)による薬害が効能を凌駕するのは当然です。

そして中には、「EGFR遺伝子に変異がある場合(複数の変異がある)に著効する」などと言う医師もいます。

欧米人で10%、東洋人で30%のEGFRに変異があると言われ、これらにイレッサが著効する

と、強調されている。

が、変異を持たない残りの大部分(欧米人:90%,東洋人:70%)について、
ほとんど語られていないのは如何なものか?

そしてこの主張は、徐々に変化を見せています。

イレッサの標的は「EGFR」ではなく、「EGFRの変異」そのものである

という言い方が出てきた後、

効能がないEGFR変異も存在する

という、言い方もされるようになっていきました。

EGFR変異と無変異とでの無増悪生存期間の差異は、わずか半年程度であるが、それでも、「医学的に有意差あり」と供述されている。

患者に悲劇をもたらす医療の本質を見抜けなかった医療裁判を二度と起こさないためにも、
イレッサの薬害被害を後世に語り継いで教訓としなければなりません。

大阪高裁判決によって被告側が勝訴したことで、
再びイレッサのような薬害被害が起こる可能性が残されているからです。

加えて、イレッサの副作用である間質性肺炎の発症をいち早く発見できるバイオマーカーも発見されていることもお伝えしていかなければなりません。

written by 執事

次回に続きます。

• ※ 掲載している画像は報道資料及び、フリー素材です

参考

  • 短縮型ミッドカイン(tMK)短波空室特異的モノクローナル抗体に関する研究「第27回 日本分子腫瘍マーカー研究会・講演」(東京大学・薬学部 総合研究棟講堂)
  • Cancer Letter163
  • Pistol Histopathol
  • British journal of cancer78(4)
  • Cancer Letter207
  • Immunity21