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ついに人類がガンを克服する時代が来るか。転移癌の因子(短縮MK)と今後重要になってくる標的分子1/1

癌が転移を起こす絶対条件である基底膜の分解と血管形成の2つを単独で成しえている唯一の因子「癌胎児増殖因子(tMK)」の発症メカニズムと、これからの癌治療においてもっとも大切になってくるであろう標的因子について日本分子腫瘍マーカー研究会 工藤憲雄さんにお話を伺いっています。

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※ MKとtMKの呼称について

  • 1)MK(MidKine):線維化増殖因子、ヘパリン結合性成長因子。損傷部位の修復を図る
  • 2)tMK(truncated MidKine):癌特異的増殖因子、転移腫瘍マーカー。単体で組織のガン化、転移に関わる現場唯一のガン転移遺伝子

− メリパ

まずはtMKが関与する転移癌のメカニズムについてお聞かせください


- 工藤さん

転移を起こす癌は「癌胎児増殖因子(tMK,※1)」と「コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPGs,※2)」との、相互作用で発症しています。

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コンドロイチン硫酸プロテオグリカン (CSPGs,※2)

巨大な細胞外マトリックス分子。
多くの場合CSPGsは、損傷部位を乗り越えようとする軸索の再生を妨げる阻害因子として働くことが知られている。

短縮型ミッドカイン(tMK)の発見者である私の次女の論文から、知見を一部抜粋しつつ、発症メカニズムについてご説明していきます。

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MK遺伝子配列のイントロン3・62位の塩基が、健常者ではG/Gが圧倒的に多いのに比べ、結腸直腸の癌患者ではG/Tの一塩基多型SNPsが頻発しています。

MK808の遺伝子多型は健常者、癌患者ともにG/G,G/Tですが、健常者の95%以上がG/Gです(女性は100%)。 


【MK遺伝子配列のイントロン3・62位の塩基】

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T/Tの遺伝子型は健常者、癌患者のいずれにも検出されていません。

ーーーー(抜粋ここまで)ーーーー

これは私が特許権をもつMK遺伝子多型の解析に協力してくれた国立大学付属病院の癌患者(大腸癌・胃癌・食道癌・肺癌・乳癌)と、職員のMK遺伝子多型(SNPs)からくる知見です。

G→Tへの塩基置換の変異が起きた場合、tMKが産出される

GからTへの塩基置換の変異が、
イントロン3のヘアピン構造の不安定化を招き、本来なら除去されない62部位に隣接するエキソン3も一緒にスプライシングを受けています。

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これをEXON SKIPPING(エキソン スキッピング)といいます。

その結果、短縮型ミッドカインタンパクを産生していることを確認しました。

つまり、癌細胞が短縮型ミッドカインを産生している要因そのものです。

癌細胞自身が作り出す「短縮ミッドカイン」は、がん細胞だけに存在するタンパク分子、まさに「腫瘍特異タンパク分子」といえるものです。
特に消化器系の癌では「転移腫瘍マーカー」としてご提案いたしたいと思います。

がん患者が死に至っている90%が転移癌ですが、この90%の転移癌のすべてにtMKが陽性になっています。残りの10%は合併症によるものです。

tMKが検出されない場合で死に至っているがん患者は現在までに確認されていませんが、tMKが検出されたら助かる見込みは全くありません。

理由は、tMKおよびtMKが結合している受容体に対する分子標的薬が未だ創薬されていないからです。

tMKの標的分子

がん定義を満たすリガンド(tMK)の医学的根拠は満たされています。
問題はその受容体であり、tMKとの複合体です。

【分子標的薬の受容体について】

  • 1)受容体型チロシンキナーゼ(RTKs)
  • 2)受容体型チロシンホスファターゼ(RPTPs)

国内外において現在創薬されている分子標的薬のすべては、1)受容体型チロシンキナーゼを標的にしたものですが、それでは転移ガンの阻止は不可能です(EGFR,VEGFR,HER2等はRTKs

2)受容体型チロシンホスファターゼでは可能になっています。

MK(※3)とtMKの受容体は「RPTPs(チロシンホスファターゼ)」です。

tMKおよび、受容体型チロシンホスファターゼを標的にしたがん分子標的治療薬は現在、国内外のいずれにも創薬されていません。

MK(ミッドカイン)の機能と医学的意義(※3)

1)チロシンキナーゼの場合、リガンド刺激(※4)で受容体同士が相互にリン酸化し活性化する仕組みを有しています。
このようなポジティブ・フィードバック制御では、RTK分子の局所の活性化が細胞膜上の他のRTK分子に次々と伝播し、広範囲でリン酸化の上昇が生じてしまいます。

2)チロシンホスファターゼの場合、リガンドが結合した分子のみ不活性化され、基質のリン酸化の上昇は局所に留まります。
チロシンホスファターゼには、チロシンキナーゼのようなポジティブフィードバックがない分、リガンド刺激を高空間分解能で細胞内シグナルを変換できます。

  • リガンド(※4)…特定の受容体に特異的に結合する物質のこと

リン酸化

酵素と受容体の構造変化や活性・不活性を調節している重要な調節機構。
キナーゼによりリン酸化され、またホスファターゼにより脱リン酸化される。


  • リン酸化…活性,機能が働く
  • 脱リン酸化…不活性,機能が働かない

リン酸化の調節の例として、18以上のリン酸化サイトを含んでいるp53癌抑制タンパク質がある。

受容体型チロシンホスファターゼ(RPTPsの生理的役割)

進む、受容体型チロシンホスファターゼ(RPTPs)の解明

平成28年10月27日から4日間の日程で東大阪キャンパスにて開催された「革新的ガン治療法開発をめざしたゲノム研究」に関する国際シンポジウム内においても、マギル大学(カナダ)Michel L. Tremblay 教授 が、ガン治療におけるチロシンホスファターゼ阻害薬の適応について特別講演を行っています。

合わせて2017年2月、ホスファターゼはガン腫瘍における酸素欠乏にも関与していることもわかってきています。

ガン細胞は、「ガン細胞キラー」と呼ばれるタンパク質であり、酸素濃度センサー分子である「PHD2」の役割を阻害するため、ホフファターゼである酵素「PP2A / B55」を過剰に発現し、身を守っているのです。(VIB,フランダースバイオテクノロジー研究所


【まとめ】

  • PHD2が活性化(リン酸化)されると、ガン細胞の酸素欠乏が進む
  • PHD2が不活性化(脱リン酸化)されると、ガン細胞の酸素欠乏が止まる

ガン細胞はPHD2を不活性化(脱リン酸化)させるために、ホスファターゼ「PP2A / B55」を過剰発現している


腫瘍がPHD2からリン酸基を除去する酵素(脱リン酸化)であるホスファターゼ「PP2A / B55」を過剰発現すると、ガン細胞の死を促進する「PHD2」は部分的に不活性化され、仕事をさせてもらえなくなってしまいます。

意外にも、PHD2のリン酸化状態は、腫瘍や正常細胞では、栄養素や成長の欠如などの代謝ストレスの主なセンサーであるmTORなどの経路によって調節されることがわかりました。
これは、我々の発見が癌だけでなく、炎症性または代謝性疾患などの他の疾患にも適用される可能性があることを意味する。

Massimiliano Mazzone(VIB-KU Leuven)教授

PP2A / B55が、がん治療の有望な標的であるという結論に至りました。
そのため、特定の薬剤の潜在的可能性を研究するために、 PP2A / B55の最終的な目標は、このホスファターゼの機能を阻害する分子を設計し、標的とする方法で癌と戦うことです

マッシミリアーノ・マゾーネ教授(VIB-KU Leuven)

マッシミリアーノ・マゾーネ教授(VIB-KU Leuven)は、「これらの過程のすべてを十分に理解するためには、腫瘍の微小環境と免疫系を詳しく調べる必要があります」と、付け加えます。

PHD2のリン酸化状態は、腫瘍の転移過程を理解、適切な治療法の選択に役立つかもしれないとのことです。

Researchers identify phosphorylation process vital to cancer growth

tMKの標的を担えるのかどうかはわかりませんが、受容体型チロシンホスファターゼ(RPTPs)を標的にした分子標的薬は、もしかしたら近い将来創薬されることになるかも知れません。

癌胎児増殖因子「truncated MidKine(tMK)

癌胎児増殖因子遺伝子プロモーター領域多型変異遺伝子型(特許第4300002号) 平成29年2月特許破棄/ライセンス情報表示

癌胎児増殖因子特異的モノクローナル抗体(特許第3920556号)平成29年2月特許破棄