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失われた腸内細菌が子どもの栄養失調の原因と判明1/1

ある種の腸内細菌は幼年期の動物の成長には欠かせません。マラウイ人やマウスにおける研究で、具体的な細菌類が明らかになりました。

栄養失調の子どもは、健康状態回復が難しい

毎年、世界中で毎年100万人以上の子どもが影響失調でなくなり続けています。

運良く生き残れた子も、カロリーや栄養素が慢性的に不足状態なので身体の成長や脳の発達がうまくいかず、免疫システムに大きな悪影響を受けます。

もしその後、適切な栄養素を摂り入れられる環境になっても、ほとんどの子どもは健康状態を回復できないそうです。 「それがなぜなのかわかりませんでした」と、ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)の生物学者、ブレット・フィンレイは言います。

腸内細菌で。改善の見込み

「栄養失調の子どもにおける腸内検査」の結果、栄養失調の子どもは、腸内細菌の適性バランスが失われていたことがわかりました科学誌『Science 』や『Cell』に掲載された新しい研究成果)。

腸内細菌は、子どもの身体の成長と発展に多大な役割を担っていたのです。 

フィンレイは研究成果を振り返り、以前は子どもの成長には食べ物が大きく関与していると思われていたが、それほどでもなかったと言います。

最近まで、食べさせていさえすれば子どもは健康だと考えられていましたが、それだけではダメだというのです。
むしろ、子どもを低栄養状態にさせないために本当に必要だったのは、ある種の腸内細菌だったのです。

とても興味深いことです。今や栄養失調を改善させる細菌がわかったので、すぐ対処可能かもしれないです。

フィンレイ

乳酸菌「ラクトバチルス・プランタルム」

先で述べたように、「栄養失調の子どもの栄養状態の回復には、どうやら腸内細菌が関係しているらしい事実」はわかりましたが、実際に「どんな特徴を持つ細菌が好影響を及ぼすのかについては、なかなか手かがりがつかめませんでした。

そんな中、『Science 』に掲載された高等師範学校(institute of functional genomics of lyon)の生物学者、フランソワ・ローリエ(François Leulier)らによる研究で、ある腸内細菌の恩恵が明らかにされています。

乳酸菌のひとつラクトバチルス・プランタルム株(Lactobacillus plantarum WJL)です。

ローリエらは、子どものマウスを「この細菌を与えるもの」と「与えないもの」の、2グループに分け、どちらにも低タンパク質の食事を与えてマウスの成長を観察しました。

結果、幼年期のマウスの成長で、めざましい特徴が現れました。

細菌を与えられないグループでは、完全に成長が止まってしまったのです

一方、細菌を与えられていたグループでは、骨、臓器、身体のサイズなどが成長し続けていました。 細菌「ラクトバチルス・プランタルム」だけで、ここまでの差異が見られるのです。

この成長促進効果により、時間はかかろうとも、一旦は「低栄養状態に直面した個体の栄養状態の改善」にもつながるのではないか、とローリエも期待しています。

彼は、後に治療法がいくつか確立できることを見越していますが、現在はまだ基礎研究レベルです。

マラウイ人研究で、さらに2種類の有効な細菌が明らかに

ワシントン大学の微生物学者で、医師のジェフリー・ゴードンによるマラウイ人の幼少期の子どもにおける研究で、「ラクトバチルス・プランタルムより、さらに可能性を秘めた細菌」が発見されたそうです。

ちなみにマラウイは、ザンビア、タンザニア、モザンビークに挟まれた内陸国で、主食は「シマ(nsima)」という、トウモロコシ粉をお湯で練ったものです。

野菜やお肉や卵がついてきます。マラウイ・ティー(紅茶)や、マラウイ湖で獲れた魚も人気です。

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シマ

ゴードンらが、「健康で、栄養状態の良い子どもの腸内細菌」を分析したところ、同年代の子どもらは、典型的に似通った腸内細菌群を持っていることが分かったのです。
一方、栄養失調状態にある子の場合は、彼らより年端のいかない子どもと同じ腸内細菌群を有していました。これも『Science 』に掲載されています。

2014年の段階でゴードンらは、栄養失調状態にあるバングラディシュ人の子どもらに共通する未成熟な細菌群(“immature microbiomes”)」を報告しています。これは世界の栄養失調状態にある子どもに共通する警告となりうるものでした。

腸内細菌が未発達なことは、栄養失調の子どもの病状を非常に悪くしている原因でもあります。

マウスを使った実験でも、栄養失調の子どもと同じ細菌を与えられたマウスは、健康な子どもと同じ細菌を与えられたものと違い、完全に発育が止まりました。

しかし、そのマウスに2種の細菌を与えてみたところ、また成長を始めたのです。その細菌とは以下のものです。

  • ルミノコッカス・グナバス(Ruminococcus gnavus) 草食動物の胃などに存在するグラム陽性(染色によって染まる)菌のひとつです。
  • クロストリジウム・ シンビオサム(Clostridium symbiosis) クロストリジウムは、土壌内部や生物腸内など、酸素濃度が低い環境に生息する嫌気性の細菌ですので酸素存在下では増殖できません。シンビオサムはその一種です。

ローリエらの研究結果とともに、ゴードンの発見も「栄養失調の治療法の確立」に繋がる可能性があります。

ゴードンらは続けて、健康な子どもとそうでない子どもの母親の母乳を分析

健康な子どもの母親の母乳はシアル酸と呼ばれる物質を豊富に含まれている炭水化物が豊富でした。こちらは『Cell』の方に発表されています。

この炭水化物が成長の鍵を握ると思われますが、人の母乳に十分な量を含ませるのは簡単ではない、とゴードンは話します。

この炭水化物はチーズ製作過程の副産物です。これは、悪玉菌だらけの腸内細菌を持つマウスの成長に、爆発的に寄与しました。ゴードンは今後、人の成長にも応用していきたい考えです。

フィンレイも、「腸内細菌が肥満に重要な役割を果たすことはよく知られていますが、これで栄養失調にも大きく寄与できることがわかりました」と、お墨付きを与えています。

腸内環境について語るフィンレイ博士(5:22)


【参照】