ニュース

赤ちゃんの「亜鉛欠乏症」が、年々ジワリジワリと増えてきている。原因は母乳からか。1/1

母乳中の亜鉛が少なくなる「低亜鉛母乳」をもたらす遺伝的な変異の中で、今まで国内で報告されていなかった変異が複数確認されました。低亜鉛母乳は赤ちゃんの亜鉛欠乏症の原因として知られています。その遺伝的な要因も明らかにされてきましたが、症例の報告数が少なかったため、発症リスクの度合いなどは知られていませんでした。本研究成果を発表したのは神戸大朋 生命科学研究科准教授らの研究グループです。

亜鉛は、生命活動に欠かせない微量栄養素です。

とくに赤ちゃんは、成長のために体重あたりで成人の 2~3 倍量もの亜鉛を必要とします。
そのため、摂取不足により容易に亜鉛欠乏に陥ることが知られています。

欠乏した場合、皮膚炎や脱毛、下痢、成長障害といった重篤な症状 を招きます。
この傾向は、早産児や低出生体重児においてはとくに顕著です。

乳児の亜鉛欠乏症は、一過性乳児亜鉛欠乏症と呼ばれています。

一過性と名付けられているように、赤ちゃんに亜鉛補充治療をおこなえば、症状は速やかに回復します。

その原因の一つとしてあげられているのが、低亜鉛母乳。

母親の乳腺において、母乳中へ亜鉛を分泌している亜鉛輸送体(※図1)における変異が、タンパク質に機能障害を引き起こし、母乳中の亜鉛濃度を低下させることが 2006 年に明らかになっています。

スクリーンショット 2016-05-24 12.51.21

続いて、当研究グループを含む複数の研究グループが、亜鉛欠乏症を引き起こす 亜鉛輸送体上の変異を複数同定しました。
しかしながら、亜鉛輸送体における変異の発生率亜鉛欠乏症の発症リスクに関する情報などは、症例報告数の不足もあって、これまで全く不明でした。

日本国内における 亜鉛欠乏症の症例報告数は、1981 ~ 2006 年の 26 年間に 17 例、2007 ~ 2014 年の 8 年間では 20 例と、ジワリジワリと増加を見せています。

発表概要

本研究では、母親の協力を得て、血液から回収した母親ゲノムDNAを解析しました。

解析の結果、 いずれの母親においても、亜鉛輸送体上にそれぞれ異なる、これまで報告のなかった変異をヘテロ接合体(※)で見出しました。

発見された新たな変異を培養細胞を用いて解析した結果、いずれも亜鉛輸送体の輸送機能を失わせることで、母乳の低亜鉛化を招いていることが明らかになりました。

  • ヘテロ接合体(※)…2つある遺伝子が異なる場合をヘテロ接合体と呼ぶ。(例Aa、Bb

スクリーンショット 2016-05-24 13.21.01

本研究の結果から、亜鉛欠乏症を引き起こす 亜鉛輸送体 遺伝子の変異は、日本人においてその数、種類の両面で従来の理解よりもはるかに多かったことがわかりました。

今回の成果は、低亜鉛母乳による乳児の亜鉛欠乏症が、日本人においてこれまでの予想よりも数多く発生している 可能性を強く示唆しています。

乳児への母乳育児は WHO により世界的に推進されており、日本においては生後6ヶ月まで、完全に母乳で栄養をおくり続ける母親が近年では 50%以上にまで増加しています。

このように乳児に対する母乳栄養が推奨・拡大される中、亜鉛欠乏症の症例はさらに増加することが予想されます。
従って、乳児の亜鉛欠乏の予防のために、本症に対する一層の認知度向上と注意喚起が必要です。

チームは今後も、亜鉛欠乏症を引き起こす 亜鉛輸送体 遺伝子の変異情報の蓄積と、解析を進めることで、乳児亜鉛欠乏の予防につながる知見を得ていきたいと考えています。

written by 坊ちゃん

『出展』