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腸内細菌が与える子供の発達への影響(その4)腸内フローラはこうして受け継がれる1/1

前回、子供の腸内フローラは、かなりの高確率で母親から受け継がれるという話をしました。ただし、それは200%、100%の確率にはなりません。その一方で、父親から受け継がれる可能性0というのは、極めて100%に近いというのですから不思議です。何故に、このような中途半端な遺伝現象が成立するのでしょうか?

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腸内フローラの遺伝は、遺伝子の仕業ではない

答えは至って簡単で、腸内フローラはそもそも、顔や性格のように遺伝子によって胎児の時に形成されるものではないからです。

何しろ、母親の子宮内で細胞分裂を繰り返しながら形成され、育って行く胎児は完全なる無菌状態!
悪玉菌も善玉菌も持っていませんが、羊水や卵膜に包まれているので、外部からの細菌に感染してしまう事もありません。

けれど、腸内フローラを形成するためには、そのベースとなる菌、即ち、種菌が必要になってきますが、これは無菌の胎児は作れないのです。

ケフィアや、カスピ海ヨーグルトを自宅で作られた経験のある方ならご存じだと思いますが、菌のないところに菌は生えません

そこで、菌を育ててケフィアやヨーグルトを作るには、種菌と呼ばれる菌を買って来たり、もらって来たりするという訳です。

ならば、赤ちゃんは一体全体いつ、どこで種菌を仕入れるのでしょうか?

確かに、空気中にも沢山の細菌がいます。

ですから、オギャーとこの世に姿を現した瞬間、様々な細菌たちとの出会いを果たす訳です。
しかし、実際には、産道を通り、膣から出て来る過程の中ですでに、母親の皮膚や粘膜に触れ、そこに生息する菌と接触しています。

当然、多少なりとも体内に取り込んでいる訳で、これこそが赤ちゃんの腸内フローラを形成するための種菌であると言えるでしょう。

そして、この種菌を使って、新生児はやがて、腸内に住み着く100種類100兆個の常在菌を育んで行くのです。

妊娠後期の母胎の変化に注目

母親の身体は妊娠後期になると、出産や授乳に向け、様々な準備をし始めます。
その一つが、膣付近に見られる酸化とグリコーゲンの分泌です。

無菌状態で子宮から出て来る赤ちゃんは、全くと言っていいほど抵抗力がありません。
そのため、どんな細菌にでも感染し、相手が悪玉菌や病原菌なら、たちまちダメージを受けます。

ところが、極めて外界に近く、トイレで周辺空気と直接触れることの多い膣付近は、雑菌の宝庫です。それも、大腸菌のような悪玉菌が遠慮なく侵入して来ます。

膣の雑菌を排除するためにはどうすればいいのか? 

とにかく彼らが苦手とする強い酸性状態を作り、取りあえず既存の菌は殺傷する!
その後も強度の酸性を維持し、むやみやたらと訳の分からない雑菌が入り込んで来ないようにするのがベターでしょう。

何故なら、圧倒的多数の悪玉菌や病原菌は、酸が苦手で、強い酸性状況では生きられないからです。

ならば、その強い酸性状況を作るにはどうすればいいかと言うと、ビフィズス菌を主とした乳酸菌を増やすに限る、という事になります。
というのも、この2つの善玉菌は、珍しく酸には非常に強い細菌で且つ、乳酸菌は読んで字のごとく、自らが酸性の物質です。つまり、乳酸菌が増えれば、その場の酸性は強まるという訳です。

ただし、例え細菌でも、増殖にはやはり餌が必要になります。

そのビフィズス菌ら乳酸菌たちの餌となるのこそが…グリコーゲン!! 

そこで、身体はこのグリコーゲンをどんどん分泌し、乳酸菌たちを増やし、産道の衛生を維持しているという訳です。

赤ちゃんの腸内フローラを作る種菌

という事で、子宮から押し出された赤ちゃんは、まず最初に産道を通る際、そこを支配していると言っても過言ではない乳酸菌群に接触します。

そして、この時点で、それら乳酸菌を腸内フローラ作りのための種菌として入手しているのです。

実際、赤ちゃんの大きな体が狭い参道を通るのですから、余裕なんて全くありません。

特に顔面などは、膣壁に擦りつけられ、否が応にもその細菌を取り込んでしまいます。
さらに、とどめは出口付近で、何度となくお母さんが力むんでいる間に、周囲の乳酸菌を残らずなめ尽くしている状況になっている子も少なくないでしょう。

結果、母親から直接もらった種菌で腸内フローラを形成するのですから、似たような性質を持つものに仕上がる確率はアップするという訳です。

しかし、戦術の通り、強い酸性を持つ乳酸菌は、数ある常在菌の中でも、最も悪玉菌や病原菌に対する抵抗力の強い細菌だと言えます。
即ち、この世に完全に姿を現す直前に多量の乳酸菌を入手する事により、浮き世の雑菌から我が身を守る術を得られるという訳です。

そこには母胎の愛情を感じずにはいられません。

そして、お父さんにはどんなに頑張ってもなし得ない技でもあります。

また、これはあくまでも赤ちゃんが産道を通ってこの世に誕生する自然分娩でのプロセスであって、膣を通過しない帝王切開では成立しません。

そう、子供が母親の腸内フローラを受け継ぐ確立が100%にはならないのはそのためなのです。

written by M.YAMAMOTO