ニュース

肺炎球菌毒素による死亡を回避する薬剤を発見1/1

順天堂大学大学院医学研究科・生化学・細胞機能制御学の横溝岳彦教授らの研究グループは、 肺炎球菌毒素によって死亡に至る分子メカニズムを明らかにしました。 さらに、 気管支喘息薬として臨床医学の現場で既に使用されている抗ロイコトリエン受容体拮抗薬(モンテルカスト*1)が、 肺炎球菌毒素による死亡を回避することも見出しました。

9157f4aa75d683a3f7db3b18c73b4dda_s.jpg

【本研究成果のポイント】 

  • 肺炎球菌毒素による致死の分子メカニズムを解明
  • 抗ロイコトリエン受容体拮抗薬が毒素による致死を回避
  • 気管支喘息薬を肺炎球菌肺炎の治療薬とするドラッグ・リポジショニング(※1)へ

ドラッグ・リポジショニング(※1)

他の疾患の治療薬として既に使用されている薬剤を、 他の疾患の治療薬として使用すること。 既に安全性や体内動態が分かっている薬剤であるため、 迅速に認可し、 臨床応用することが可能となる。

【背景】

 1年間に国内で10万人に1.15名が感染する侵襲性肺炎球菌感染は致命率が7.4%と高く、 2013年からは5歳未満の小児、 2014年10月からは65歳以上の高齢者を対象にワクチンの定期接種が行われています。

肺炎球菌が産生する毒素ニューモライシンは、 感染した細胞の膜を穿孔して細胞死を引き起こすことが試験管内の実験で確められていました。

しかし、 ニューモライシンによって個体が致死するメカニズムはよく分かっていませんでした。
そこで、 私たち研究グループは毒素ニューモライシンによってマウスが死亡するメカニズムを明らかにするため、 肺に発現する受容体BLT2(※2)とそのリガンドである生理活性脂質12-HHT(※2)の肺保護作用について調べました。

生理活性脂質12-HHTと受容体BLT2(※2)

アラキドン酸から産生される生理活性脂質、 12-ヒドロシキヘプタデカトリエン酸。 その受容体であるBLT2は横溝研究室で遺伝子同定され、 皮膚や腸管上皮の保護作用を有していることが明らかになっている。

【研究内容】

 まず、 肺炎球菌毒素ニューモライシンをマウス気道内投与し致死率を検討したところ、 12-HHTの受容体であるBLT2の欠損マウスが、 短時間で死に至ることを見出しました。

また、 12-HHTの産生を阻害する非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)投与によっても、 ニューモライシンに対する致死率が上がることが分かりました。

 ニューモライシンを投与されたマウスが気道抵抗上昇、 血管透過性亢進などの気管支喘息様の症状を示したため、 肺や肺胞洗浄液を生化学的に調べたところ、 気管支喘息誘引物質であるロイコトリエンC4, D4, E4(※3)が産生されていることが分かりました。

気管支喘息誘引物質 ロイコトリエンC4, D4, E4(※3)

アラキドン酸から産生される生理活性脂質であり、 古くはSRS-Aとも呼ばれた。 気管支平滑筋を収縮させるとともに、 血管透過性を上昇させる作用を有し、 気管支喘息を引き起こす物質として有名である。

そこで、 ロイコトリエン受容体拮抗薬であるモンテルカストを前投与したところ、 ニューモライシンによる致死を抑制することに成功しました(図1)。

sub1


main

 以上の結果から、 ニューモライシンによる死亡がロイコトリエンC4, D4, E4産生を介していること、 および、 NSAIDsによる12-HHT産生抑制が、 ニューモライシンによる死亡率を上昇させていることが分かりました。