世界トップクラスの結核研究者が「世界肺の健康会議」のため英リバプールに集まる中、 国境なき医師団(MSF)は、 日本の大手製薬企業である大塚製薬に、 南アフリカ共和国のような薬剤耐性結核(DR-TB)高まん延国の人びとがデラマニドによる治療を受けられるよう、 実行計画を提供するよう要請している。

Close up of sachets of the drug Delamanid in the Town 2 Clinic, Kuyasa, Khayelitsha, Western Cape in South Africa.

デラマニドは、 人命を脅かすDR-TBとの闘いに有効な、 過去数十年でも最も有望な新薬の1つだ。


実行計画は、 大塚製薬が当該国でデラマニドの薬事登録を目指すとともに、 当面は臨床調達プログラムを通じて十分な薬を提供し、 価格と特許実施権について情報公開する意志の表明となるだろう。



既存薬の大半が効かない、 特に耐性の強い結核の患者にとって希望の光となっている。
ただ、 薬の相互作用の関係で、 結核とHIV/エイズに重感染している患者へのベダキリン使用は難しい。

この点はデラマニドの方が問題も少なく、 一般的な抗レトロウイルス薬(ARV)合剤との併用が可能だ。
また、 小児患者への効果も期待されている、 6歳以上の子どもへの投与を世界保健機関(WHO)が間もなく勧告すると見られている。

  • 一方で、 デラマニドによる治療は2016年10月までに 405人しか受けていない。

WHOの最新の2015年の推計は、 多剤耐性結核(MDR-TB)治療の対象者を 58万人としている。


新薬の恩恵を受けるべき患者の数と、 実際にその治療を受けている人の数に大きな差がある理由の1つは、 薬を開発した企業による各国での薬事登録申請が遅いことにある。

例えば大塚製薬のデラマニドは、 世界的に見ても結核・DR-TBのまん延が著しく、 2015年に2万人がDR-TBと診断されている南アフリカでの登録も、 未申請だ。

Simphiwe takes his first delamanid tablets, which have now been included into his treatment regimen for XDR-TB. Simphiwe Zwide, 43 years, lives in a one-bedroom house with his wife, Nomonde Tyala, and children in Kuyasa, Khayelitsha. Simphiwe was first diagnosed with MDR-TB in 2011. He completed six months of treatment, but when he learned that he had pre-XDR-TB and would need even more treatment, he lost heart and returned to work.  In June 2016, he presented back to his Khayelistha clinic as he had fallen ill again. This time test results showed he had XDR-TB. He took his first delamanid tablets on 12 October, as part of a strengthened regimen for XDR-TB. Simphiweís current regimen: Delamanid, bedaquiline, linezolid, levofloxacin, terizidone, clofazimine, ethionamide Simphiwe Zwide: ìIn 2011, my wife had TB and they admitted her into Jooste District Hospital. I visited her for over a week.  When she came out of hospital, I fell sick.  I couldnít eat, my body was painful, my throat was sore ñ I thought I had a virus. My wife tried to cook ñ sour milk and maize meal. I couldnít swallow. I had to drink many cups of water. I was sweating ñ I couldnít walk even couple of metres.  My wife was very supportive of me. She would leave me taxi money and go and stand in the hospital queue for me from 5am. I started to feel my health returning and I felt like I could work again. Iím the breadwinner, and we were all suffering. I was the only one who could work for my family. I was taking clofazamine injections which meant that I had to attend the clinic every day and this was preventing me from finding a job.   I was between Johannesburg and Cape Town looking for work between 2012 to the end of 2016. Then in January 2016, I started to get sick again. I couldnít work like Iím used to.  I came back to Khayelitsha, now Iím here at Kuyasa clinic getting treated for XDR-TB. Iím joining a support group soon.  Iím a jack of all trades - I learned to be a


各国における薬事登録は、 申請手続きを急いだとしてもときに何年もかかるが、 その国の保健省が当該薬を臨床ガイドラインに追加したり、 調達価格を交渉したりするために、この手順は避けられない。

MSFは、 大塚製薬が薬事登録を申請し受理された暁には、 薬事機関による速やかな処理を促すよう求めている。


デラマニドは標準的なHIV/エイズ合剤と併用できることから、 結核患者の70%以上がHIV陽性者の南アフリカでとりわけ注目の的となっています。

年間7000人と推計されるDR-TB患者も、 デラマニドが治療に組み込まれれば助かるでしょう。
ただ、 この薬を必要な人に届けるためには、 大塚製薬に薬事登録を急いでもらわなければなりません。

また、 登録までの期間をつなぐ十分な数量の薬を臨床調達プログラムで提供するための計画策定も、 呼び掛けています。


薬事登録だけでなく臨床調達プログラムも進捗が遅く、 デラマニド普及拡大の妨げとなっている。

南アフリカ保健省は率先して大塚製薬との関係構築を目指し、 薬事登録前であっても特定の臨床現場でデラマニドの処方が可能になるプログラムを策定している。

南アフリカでは過去 10ヵ月の間に、 主治医による症例ごとのコンパッショネート・ユース(※)申請を経て、 少数のDR-TB患者の治療にデラマニドが組み込まれた。

そのうち52人は、 ケープタウン郊外の大規模居住区カエリチャの患者だ。

MSFは、 彼らの半年の治療に用いるデラマニドを1人あたり2万3600ランド(約17万9000円)で購入している。

  • ※人道的配慮から、 生死に関わる病気の患者に対し、 販売承認に先立って未認可薬の使用を認める制度

国レベルでの臨床調達プログラムがようやく開始されたことは、 歓迎すべき展開でしょう。
ただ、 薬事登録に先駆け、 デラマニドが必要を満たせるほど十分な数量となるか否かははっきりしていません。


カエリチャで最初のデラマニド服用者の1人であるシネゼンバ・クセさん(16歳)は、 今年2月に超多剤耐性結核(XDR-TB)と診断された。

回復を支えた祖母も、 大塚製薬に心から訴え掛ける。


診療所に大勢の結核患者がいました。 あの人たちがデラマニドを手に入れられれば、 DR-TBも克服できるでしょう。

結核は大変な脅威ですが、 致命的ではありません。 治療は可能なのです。

  • 世界の結核の現状と詳細についてはWHOの 『Global tuberculosis report(世界結核報告書)』をご参照ください:www.who.int/tb/publications/global_report/en/