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夏休み特別企画『人』はこうして作られる(第3回)人の素『精子』は強靱の英雄1/1

前回、全能性細胞である受精卵さえあれば、人は作れるという話をしました。でも、その受精卵を作るのは大変な事で、まず何より、お父さんの『精子』とお母さんの『卵子』がなくては話になりません。 そこで、まずは生命の元である卵子と、生命の素である精子についてご紹介しましょう。それでは、『精子』からです。

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『精子』は遺伝子の配達人

  • 『精子』は、お父さんの身体が作り出す、大切な大切な細胞の一つです。

ただし、それそのものが『人』を作れる全能性細胞ではなく、受精卵を作るために一役買う存在と理解するべきでしょう。
何故なら、お父さんの遺伝子をお母さんの卵子の中まで運ぶ、宅配便のお兄さんのような任務を担っていて、無事に配達が終わると、残念ながら、その命を全うしてしまうからです。

元々精子は短命な生き物で、どんなに頑張っても、お母さんの体の中では3日ほどしか生きられません。

けれど、それは決して精子自身が虚弱体質な生き物だからという訳ではなく、大切な命を守るためのお母さんの胎内は、精子が住む環境としては非常に劣悪だからです。

だからこそ、男性陣たちは、毎日毎日沢山の精子を作っては、大量に送り込まなければならないんですね。

そんな中、最後の最後まで頑張って、大事な荷物を愛する人の元へ届けた精子は、正に強靱の英雄だと言えるでしょう。

精子の製造工場

  • 健康な生殖器を持つ男性は、思春期を迎えると、精巣の中にある専用の細胞を使って、日々精子を作り始めます。

こうしたいわいる製造工場は、ペニスの付け根の部分に付帯する『陰嚢(いんのう』という袋の中にある『睾丸(こうがん)』と呼ばれる球体です。

慣れて来ると、心臓が鼓動を打つ度に1000個ずつのペースで、一日に1億個以上作れるようになるというから、正しくドッキリ、ビックリですね。

ただし、この工場の従業員たちはみんな、とってもとってもデリケートで、特に音頭やストレス等の外部刺激をストレートに受け入れるため、条件によって、生産能率は驚くほど変化します。

最も快適に作業出来るのは、33度から34度前後と言いますから、体温より若干低めと言ったところでしょうか!? 

そう、睾丸が体外にぶら下がっているのは、容易に温度調整が出来るようにです。
通常、そのままの状態であれば、その適温を維持するようになっています。

そして、急激に温度が下がった場合には、陰嚢の筋肉が収縮し、睾丸を体内に引き上げます。

そうして適温まで暖めたら、再び体外に押し出す、という自動温度調節機能を完備していて、改めて、人の体はすごいなぁと感心させられずにはいられません。

精子は優秀なる精密機械

  • 精巣で作られる精子は、2つと全く姿形の同じものはないと言われています。

とは言え、いずれも、体長0.05ミリから0.06ミリ程度!
大きな頭と長い尾っぽを頚によって繋がれた、人とは似ても似つかぬ形状をしています。

しかし、立派な生物体ですから、ちゃんと性別もあって、Y染色体を持つ雄と、X染色体を持つ雌とが、ほぼ半分ずつ作られているため、そのどちらの精子がお母さんの卵子と結び付いて受精するか? これによって、男の子が生まれるか、女の子が生まれるかが決まるのです。

頭部は、お父さんの遺伝子の格納庫。
尾っぽは、お母さんの胎内を泳いで全身するための手足の代わりの部位。

その尾っぽを支える頚は、精子の動力源とも言えるもので、全身がタンパク質の膜に包まれています。

このような精子の構造を見ると、必要最低限の部位を持つ、必要最低限の大きさの細胞体で、精密機械のごとく優秀な生物体であることが分かるでしょう。

故に、そう簡単に製造できるものではありません。

精子の製造には2ヶ月以上も掛かる!!

時より、俺は元気だから、毎日新しい精子を作っては射精していると自慢げにおっしゃる方がおられますが…

実は、これは半分正解、半分間違い!!

なんと、精子は 70日以上もの長い月日を掛けて仕上げられるのです。

さらに、仕上がった精子は、『副睾丸(ふくこうがん)』という長さ5センチほどの円錐形の部位で、数日間貯蔵され、その後に体外へと出されます。

この副睾丸は別名『精巣上体(せいそうじょうたい)』とも呼ばれ、その名の通り、精巣に帽子のように乗っかっていて、10億個程度の精子を貯蔵することができます。

そのため、精巣では毎日新しい精子を作っている事は事実ですが、それが副睾丸から出荷されるのは2ヶ月半くらいも先ということになります。

つまり、今日出す精子は、同じく2ヶ月以上も前に製造開始されたものというわけです。

この事からも分かる通り、お父さんの精子は、実際には、3ヶ月程度は容易に生きられるものです。
決して虚弱体質なんかではありません。

それどころか、過酷なお母さんの体内で命がけで大事な遺伝子を運び、その生命を全うするという強靱の英雄なのです。(次回につづく)

written by M.YAMAMOTO

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