ニュース

『人』はこうして作られる(第14回)『精子』の旅路と、第1関門1/1

私たち人間がどのように作られるのかを知る 夏休み特別企画、第3部はいよいよ、お父さんの持つ命の素である『精子』と、お母さんの持つ命の元である『卵子』が出会い、唯一の全能性細胞である受精卵が誕生するまでのお話しです。

22863c49d394db450002ec4a74300360_s

とかく、精子ばかりが一生懸命頑張り、「精子の旅」などとも称されがちな物語でしたが、決してそんな事はありません。

新しい命の誕生を願うお母さんのカラダもまた、一生懸命頑張ります。
両親の愛と力を得て『人』は作られるのです。

精子たちの旅路 – Legend of the golden 

以前、「精子と卵子が出会う場所」という記事でお話ししたように、膣からお母さんの体内に入った精子たちは、子宮頸部を通過し、子宮口を抜けて卵管に向かいます。

その距離、約20センチ前後! 

思わず『たった〜!』と言ってしまいそうな短さですが、何しろ精子は全長0.05ミリしかない微生物です。

どんなに頑張っても1秒間に50マイクロメートルしか進めません。
そう、私たち人間から見ると、正しくディズニー映画「ミクロキッズ」の世界のようなお話なのです。

実際、身長170センチの男性と比較すると、0.05ミリの精子は34,000分の1になり、この20センチの距離は、約6.8キロにも及びます。

秒速50マイクロメートル=1秒間にたった0.05ミリしか進めないスピード! 

20センチの旅は、単純計算しても1時間程度掛かることになります。

とは言え、私たち一般ピープルが、クロールで6.8キロという距離を泳ぐとすれば、2時間前後掛かるものと思われます。

さらに、徒歩で進むにしても、1時間以上掛かる人が多数であることを考えると、精子は決してスローな生き物ではありません。

中には、僅か30分少々で目的地に辿り着く兵もいて、オリンピック選手顔負けの奮闘ぶりを発揮しているのです。

お父さんの体内から、お母さんの体内へ!

さてさて、精子は、お父さんの尿道口から筋肉の力で噴射され、お母さんの体内に放出されるのはご存知だと思います。

所謂、『射精』の瞬間です。

その数は1億匹から3億匹、その時間は僅か2秒程度です。

秒速にすると12キロにもなる恐ろしい勢いです。
そのため、この発射時点で、強い衝撃によりダウンしてしまう精子も少なくないです。

しかし、射精に際しては、以前説明したように、精嚢と前立腺液で何万匹もの精子を一括して包むようにしたゼリー状の精液を射出する形ですから、取り敢えず全員がお母さんの体内に入ることはできるものと見られます。

精液は弱アルカリ性、酸性の膣内での精子たちの適応をサポートします。

このサポート力により、より多くの精子を送り込むと同時に、より多くの精子の命が守られているのです。

生き残れるのは、100分の1

射精は、ゼリー状の精液という玉を次々と連発するマシンガンだと言えるでしょう。
そして、目標とする的はズバリ、お母さんの『子宮頸管』です。

運良く命中した精子集団の玉は、その粘り気を利用して、うまく子宮頸管の壁に張り付けるのですが…

いつまでも塊のままでは、逆に全滅の確立が高まります。

そこで精液は徐々に粘着力を弱め、やがてサラサラの液体となって、個々の旅人となっていくのです。

しかし、それと同時に、精液の中でも比較的外側に近い部位にいる精子。
すでに強烈な酸を浴びせられた精子や、元々虚弱体質で劣悪な環境に耐え切れなかった精子など、「大半の精子が命を落としてしまう」という現実は否めません。



加えて、先述の通り、射精と同時にダウンしているものもいて、仮に3億匹の精子が送り込まれたとしても、ここで元気に生きているのはたった300万匹程度と言われています。

そう、99%は死滅してしまうのです。
死滅後は、膣口から体外へと排泄されます。

精子にとって膣は、第1関門

女性の卵子は、月に一度しか排卵されません。

それ以外の時期は、お母さんにいくらお父さんの精子を受け入れる気持ちがあっても、「カラダが受け付けない」という悲しい現実があります。

なんと、卵管を目指すためには何が何でも通らなければならない『子宮頸管(しきゅうけいかん)』の入り口が堅く閉ざされ、どんなに元気な精子が強硬なアタックを心見ても、全て弾き返されてしまうのです!



万分の一の確立で侵入出来たとしても、そこは完全なる酸性空間。たちまち自滅してしまう運命が待ち構えているだけです。

さらに、精子は花粉やインフルエンザウイルスと同様、元々女性の体には存在しない異物ですから、「頻繁に入り込んでくる」となると、抗体が出来ても決して不思議ではありません。

所謂、これは「免疫反応」というもの

事実、稀にではありますが、『抗精子抗体(こうせいしこうたい)』を持つ方もいます。

そして、その場合には、根こそぎ精子の運動機能を墓石、息の根を止めてしまうため、その後の旅を続けられる精子は消滅してしまうのです。

という事で、精子たちにとって、半ば無理矢理という感じで放り出された膣内は、まぎれもなく恐怖の第1関門であると言って過言ではないでしょう。

written by M.YAMAMOTO