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『人』はこうして作られる(第16回)『頸管粘液』は精子の味方?1/1

お母さんの膣内に精子が射出された瞬間、お父さんの精子たちの過酷な旅は始まり、早々にしてその大半が命を落とします。 そんな中、少しでも多くの精子を守り、導くのが、お母さんの分泌する『頸管粘液(けいかんねんえき』です。

と、ここまでの話では、「頸管粘液はママの愛の結晶で、精子の味方」というイメージがあるでしょう。
ところがところが、実際には必ずしもそうとは限っていないのです。

頸管粘液はフィルターだった!

アルカリ性で、サラサラした透明の頸管粘液は、見るからに精子が泳ぎ安そうです。
実際、スイスイと泳ぎ、多数の精子が子宮口の中へと入って行っているように見えます。

けれど、この粘液のプールを泳ぎ切る、子宮口内にいる精子は、それなりのスタミナと運を持つ強靱な兵たちなのです。

というのも、この頸管粘液、子宮頸管の内側に設置された濾過紙のように、実は無数の細いトンネルで構成されたフィルター状になっています。

そのため、肉体的に異常のある精子は通れません。

加えて、中には入り口だけしかない穴も少なくなく、もしそこに入れば、例え正常で頗る元気な精子でも一巻の終わりです。

ここで、「本当に元気でラッキーな精子のみが、卵子と出会い、受精卵となれるよう選別される」という訳です。

なぜこのようなろ過機能が備わっているのか?頸管粘液のもう一つの役割!

頸管粘液が細かいフィルター状になっているのは、一度に多数の精子を送り込み、子宮口内で白血球に根こそぎ退治されてしまうケースを防ぐためでもあります。

実際、いち早く卵管に辿り着いた先発の精子集団の中から受精卵になる精子が出るのはごく稀です。

ある程度まで頸管粘液の中で控えていた後発の面々の中に、「命の素となる1匹がいた」が圧倒的多数!

やはり、先頭を切って戦いに挑んだ精子はダメージが大きく、いざという時にはふらふらになっていたり、肝心の頭部を破損していたりで、名誉の戦死を遂げるのが一般的なようです。

ちなみに、アルカリ性の頸管粘液内では、精子は比較的楽に生きることができますが、この頸管粘液は精子たちにとっては運命の分かれ目とも言える 第2関門であることは間違いないでしょう。

子宮口内に辿り着ける精子の確率、0.001%!

頸管粘液は精子にとって味方なのか?敵なのか?

そう言われれば、少々微妙ではありますが、少なくとも、新しい命の芽生えをサポートする正義の味方であると言えるでしょう。

頸管粘液の恩恵を存分に被った精子たちは、無事に子宮口へと侵入することができます。

ただし、「その数およそ3000匹」

これは、お父さんが射出した精子3億引きのうちの0.001%に該当します。

膣内で生き残った精子の数が1%であることを思い出すと、果てしなく多くの死者が出ることを悟らずにはいられません。

されど、目雑卵管の入り口は、「子宮底」の左右に一つずつある。
子宮口内に泳ぎ着ければ、一先ず安心!

後は卵管に入ればいいだけです。
きっと、ほっこりする精子も少なくないのではないかと予測されます。

実際、直接精子を子宮口内に注入すると、子宮の収縮運動に助けられ、僅か5分程度で卵管に入ると言われているのです。

「5分」が、精子たちにとっては命がけの勝負! 

人工授精とは異なり、何度となくピンチを乗り越えてきた精子たちにとっては、もはや残された体力は僅か。
最後の力を振り絞って泳いでいる、と言っても過言ではないでしょう。

にも関わらず、子宮内幕(しきゅうないまく)のひらひらが張り巡らされた子宮口内は、まるで藻だらけの海底です。小さな精子はバンバン引っかかってしまいます。

おまけに、目指す卵管口があるのは「子宮底の左右」です。

底、と言っても、実はそこは子宮の天井部分にあたるわけで、下部の子宮口入り口からは最も遠い場所となります。

それでもとにかく、ただひたすら藻にもがきながら泳いでいると、突如、恐ろしい集団が襲いかかって来ます。次回!どうなるミクロの戦士、精子たち!

written by M.YAMAMOTO