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『人』はこうして作られる(第17回)そのとき卵子はどこに?1/1

精子たちの旅も、いよいよ佳境に近付いてきました。が、その前に一つ気になることはありませんか? 命の素となるお父さんの精子の様子はよく分かりましたが、この時、命の元であるお母さんの「卵子はどこで何をしているのか?」という疑問です。

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精子達ががんばっている多くの場合、精子とのお見合い場所である卵管内の『卵管膨大部(らんかんぼうだいぶ)』というところに卵子は来ていません。

恐らく、卵巣の中にある『卵胞(らんぽう)』という温室で、せっせこと育てられている最中ではないかと思われます。

精子は硬貨、卵子は紙幣!?
Banquet of the golden witch

卵子について、おさらい

  • 精子のように、お父さんが大人になってから日々製造されるものではない
  • お母さんがまだ、おばあちゃんのおなかの中にいる胎児の間に製造される

いわば、精子は造幣局から出荷されて来たばかりの硬貨。
卵子は日銀に預けてある紙幣みたいなものです。



正直なところ、どんどん製造され、出荷されて来る小銭については、少々雑に遣っても惜しくはありませんが、貯金を切り崩す形で出すお札については、出来る限り無駄にはしたくないもの! 

3億匹ほど送り出される精子とは異なり、卵子はたった1個。それも、月に一度だけ送り出されます。

とは言え、やはり人間、貯金があれば、ついつい知らず知らずの間に遣ってしまうもので、卵子も日々恐ろしいほどのスピードで減少して行きます。

産まれる時にはすでに、当初の3分の1程度にまで減っていて、その後もどんどん少なくなる一方!! 

胎児の頃には500万個以上もあったはずの卵子は、成人するころには30万個程度にまで減少している。というのですから、希少価値は益々高まります。

精子の味方『卵胞液』!

「月に一度の1個」に選ばれた卵子は、卵胞の中で、『卵胞刺激ホルモン』の刺激を受けながら、徐々に成熟し、受精可能な能力やスタミナを育成していきます。

この卵胞というのは所謂、水耕栽培のハウスのような施設です。

内部には『卵胞液』という特殊な用水が入っています。
そして、その真ん中に『卵丘細胞(らんきゅうさいぼう)』という土を入れ、そこに卵子を包み込むようにして大切に育てているのです。

実はこの卵胞液、スズランの香りによく似た特殊な匂いを放つ液体で、前回出て来た「頸管粘液」と同様、精子を導く重要な役割も担っています。

女性の卵巣と卵管は左右に一つずつ、2ヶ所ある訳ですが、先述の通り、卵子は月に1個しか育てられません。

すなわち、どちらか一方のみが営業、もう一方は休業中になるのです。

通常、左右の卵巣は江戸時代の北町奉行書と南町奉行書のように、月交代で営業しますが、どちらか一方に不具合があれば、2ヶ月でも、3ヶ月でも同じ卵巣から排卵されます。

もし仮に、きちんと定期的に左右平等に動いていたとしても、お父さんの身体から出てやって来た精子には知ったことではありません。

卵胞液の匂いを頼りに、左右どちらの卵管を目指せばいいのかを判断するのです。

加えて、精子たちは、この卵胞液の匂いを嗅ぐことで、「受精能力」も身に付けていきます。
卵胞液はもちろん、卵子を育てるのにも大活躍してくれます。

ようするに、「卵胞液の存在なくして新しい命の誕生はない」ということなんですね。

卵子の寿命は短い

卵巣では、卵胞を育てながら、その卵胞の外壁から分泌される『卵胞ホルモン』を子宮口内に送り込み、子宮内膜を形成していきます。

排卵する卵胞候補を選出し、卵子を育成しながら「黄体ホルモン」とも呼ばれる卵胞ホルモンを子宮内幕を形成するのに必要な分量だけ送り込んでいきます。

  • ここまでの作業に掛かるのが約2週間!そして、「排卵の時を迎える」のです。

ここまで手塩に掛けて育てられた卵子、その寿命は精子よりも遙かに短い

卵子は36時間程度しか生き延びられません。

つまり、その間に良質な精子がアタックして来てくれなければ、死滅してしまうのです。

「先にお見合い場所の卵管膨大部に行って、精子の到着を待つ」のは極力避けたいところでしょう。

なので、事前に精子を待機させられるように、排卵直前になると、それまで強い酸性の粘液で堅く閉ざしていた子宮頸部では、頸管粘液を分泌し、精子ご一行様の受け入れをするというわけです。

written by M.YAMAMOTO