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『人』はこうして作られる(第19回)成長した『精子』たち1/1

前回、卵管の入り口には、「優秀な精子のみを識別し通過させるための探知機のようなものがある」という話をしましたが、実は、元々狭くて複雑な構造になっているこの部分を通り抜け、卵管の中に入るためには、それに応じた巧みな身体の動きを司るだけの判断能力と、運動能力が必要不可欠になります。

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つまり、探知機が作動しても、しなくても、知力と体力に自信のない精子は脱落し、白血球に御用となってしまう仕組みなのです。

精子は実は、受精能力を持たずに旅立つ!

私たち人間から見れば、僅か数時間の精子の旅ですが、当の彼らにとっては恐ろしいほど長く、過酷な旅です。

故に、その旅を通して精子たちは、着実に成長して行きます。
そして、卵子と結ばれた際に受精出来る能力も授かっていくのです。

そう、ちょっと意外に思われるかも知れませんが、実はお父さんの体内に控える精子たちはまだ、受精能力を完備していません。

なんと、この旅のさなかで『卵胞液』の刺激などを受けることによって、受精能を身に付け、確立していくのです。

因みに、この過程を専門的には『キャパシテーション』と呼びます。

当然ですが、卵胞液に円滑に導かれ、卵管口に辿り着いた精子は、それなりの受精能獲得に成功した精子だと言えるでしょう。

そこで、難なく卵管口の探知機も通過し、卵管内に進めるというわけです。

卵管は、精子にとって竜宮城!

卵管は正しく、命の素となるべく、良質な精子を迎え入れる形になります。大歓迎状態です。


ここで素敵なお母さんの卵子と出会えることを考えても、精子たちにとってはまさに竜宮城だと言えるでしょう。

確かに、卵管の中にもまた、子宮口内に負けず劣らずな状態です。

多くのヒダヒダがあり、私たちが思うような快適な直線道路ではないものの、精子の大好きな弱アルカリ性で、これまでのような強い酸に苦しめられる心配はありません。

おまけに、卵子とのお見合いの場所である『卵管膨大部』付近には、精子が必要とする栄養素も豊富です。

取り敢えずここまで来れば、本当に一安心!! 

彼らは束の間の休息をとることが出来るのです。

そして、さらなる卵胞液の刺激を受けながら、受精能をより強く確実なものに発育させて行きます。

ただし、ここまで辿り着ける精子の数はたった100匹ほど。
仮に3億匹の精子がお父さんのカラダから放出されたとすれば、300万分の1。0.00003%少々の確率です。

ついに『排卵』!

一方、卵巣の方ではその頃、赤い実はじけたのように卵胞が弾け、中から卵子が飛び出しました。

『排卵』の瞬間です。

卵管の先端にある吸引能力を持つ『卵管漏斗(らんかんじょうご)』が、卵子をすかさずキャッチ! 素早く卵管の中に取り込みます。

正しく、以前お話しした通りの流れで、生命の誕生プロジェクトは進行されて行くのです。

ただし、私たち人間の『卵管采(らんかんさい)』とも呼ばれる卵管の先端の部分は、卵管本体に後から取り付けたような形状になっていて、微妙な隙間のようなものがあります。

そのため、拾った卵子を確実に卵管内部に取り込めるとは限っておらず、事実上、どんなに元気なお父さんとお母さんの間にも、天使が運ばれて来るチャンスは、2ヶ月に一度と思っておいた方が無難でしょう。

加えて通常、右側の卵巣から排卵された卵子は、右側の卵管に取り込まれますが、稀に、勢いよく弾け、左の卵巣付近にまで飛べば、そのまま左の卵管がキャッチするケースもあるのです。

そうなると、右の卵胞から分泌された卵胞液の匂いを頼りに右の卵管に入り、待機していた精子は、残念ながら出会いを果たせません。

こうしたアクシデントは、卵子が故意に引き起こす訳ではないものの、いかに『人』が貴重な存在として作られるかが分かりますね。

超活性化した精子たち!

とは言え、「右の卵巣で育った卵子が、左の卵管に拾われる」なんていうケースは稀ですから、精子たちは、卵胞液の匂いのする卵管膨大部で待機するのは絶対条件!
後は卵子との出会いをひたすらに信じるのみでしょう。

卵子だって同じです。
全身全霊の思いを込めて、卵胞から飛び出し、必死に卵管に渡って精子の元へと向かいます。

そして、卵管の収縮運動に助けられながら、近づいて来る彼女の姿を見付けると、すぐさまその胸元目掛け一心に泳ぎ出す精子たち! 

実はこの時、それまでは前進あるのみだった彼らの泳ぎが、縦横自在になり、ジグザグ走行も可能になっています!! 

そうです、小さくて弱々しかった精子たちは、さらに進化し、正にヒーロー戦隊に大変身していたのです。

これを専門用語では、『ハイパーアクチベーション(超活性化)』と呼び、これをもって、彼らの受精能獲得は完全達成となります。

written by M.YAMAMOTO

もはや、誰もが命の元となる資格を得た精子たち、果たして、この中から、真の勝者となるのは誰か…!?