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不妊治療に新たな突破口が開かれる、体外で卵子の作成に世界で初めて成功1/1

九州大学大学院医学研究院の林克彦教授の研究グループは、成体マウスの尻尾にある組織由来の iPS 細胞から、培養皿上で卵子を作製することに世界で初めて成功しました。これらの卵子は正常に受精し、健常なマウスとなりました。

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研究チームは、多能性幹細胞(※1)から卵子までのすべての過程を培養皿上でおこなう「卵子産生培養システム」を構築し、成体マウスの尻尾から培養皿上で卵子を得ることに成功しました。

また、作られた卵子からは健常なマウスが得られています。

(*1) 多能性幹細胞

体と構成する様々な細胞(生殖細胞を含む)へと分化する能力をもち、さらにその能力を維持しながら自身を複製することのできる細胞のこと。その例として ES 細胞や iPS 細胞がある。

この快挙に海外から称賛の声が多く上がっています。

今回の培養方法により、卵子が培養かで作成できるようになったことが卵子形成の謎の解明に
つながり、不妊原因の究明、または新しい不妊治療法の開発が期待されます。


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成体のマウスの尻尾由来の iPS 細胞から、すべて過程を体外培養下で再現し、機能的な卵子を得ることに成功。
その過程(IVDi:体外分化培養、IVG:体外発育培養、IVM:体外成熟培養)では、様々な分化ステージの卵母細胞が体内と同じように認められた。


研究者からの一言

生命の源である卵子がどのようにできるかについては、未だに不明な点が多く存在します。

我々の研究室では日々その謎に迫るため、楽しく苦しい研究を続けております。
これらの研究で得られた知見や技術が、現在・未来を問わず医学や生物学の発展に貢献すれば幸いです。

【研究概要】

・始原生殖細胞(※2)から卵子ができるまでの 5 週間を、 3 つの培養期間に区切り、各期間について約 3 年にわたる基礎的な培養条件の検討の結果、多能性幹細胞から卵子への分化過程を再現できる培養システムを開発しました。

・開発したシステムを用いることにより ES 細胞、さらには成体の尻尾由来の iPS 細胞のいずれの細胞からも卵子を産生することができています。
得られる卵子数も多く、一回の培養実験で約 600 個 〜 1,000 個の卵子を作り出すことができました。

・システム内における卵子の形成過程における遺伝子発現の変動を調査した結果、体内の卵子形成過程と極めて良く似ていることがわかりました。得られたマウスは、野生型のマウスと同様に成長し、正常に子供をつくる能力も持っていました。

(*2) 始原生殖細胞

全ての卵子もしくは精子の源となる細胞。発生初期は少数の細胞集団であり、その発生様式に性差はないが、胚齢 12 日目前後に周囲の体細胞によって、卵子もしくは精子へと分化することが決定される。

これらのことから、本研究が世界で初めて機能的な卵子を産み出す「卵子産生培養システム」の構築に成功したと言えます。

海外の専門家の反応は…

これは誰もが卵子のもっとも初期の段階から、実験室のみで完全に成熟されることができるという驚くべき成果である、と海外の専門家から称賛の声が多数上がっている一方、ヒト細胞で実験することのリスクの高さから、「この人口卵子の技術を人に適用させるには、多くの障壁がある可能性が高い」という声も上がっています。

それでも、この研究が進めば癌治療や不妊治療をおこなっている人にとって嬉しい治療法が誕生しそうです。

written by 執事

出典