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精子がない「無精子症」の発症メカニズム、徐々に解明に近づく1/1

精液に正常な精子がなく、子どもを授かることができない夫婦の方々がいます。EDとはまた少し違う無精子症ですが、その発症メカニズムは不明なままでした。

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図1精子ができる仕組み

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正常な精巣においては、精子幹細胞は自己複製しつつ、細胞分化によって精子を形成します(左)。
しかし、精子幹細胞に細胞分化異常が生じると、精子が作られずに無精子症となります(右)。


この幹細胞の仕組みに何らかの以上が生じてしまうと、精子を作ることができなくなり、最終的に無精子症となります。

このたび、中部大学の上田潤助教、近畿大学の山縣一夫准教授、九州大学の原田哲仁助教らのグループは マウスをモデルに、精子幹細胞は分裂はするが、分化に異常が生じて結果的に無精子症になるメカニズムを明らかにしました。

しかも、科学的に大変興味深いことに、このメカニズムが「ヒストン」と呼ばれるDNAに結合するタンパク質の精巣タイプによって制御されていることが分かっています。

この精巣型のヒストンを失ったマウスは見かけ上、全く正常に発育し健康でしたが、雄が無精子症となり、完全に不妊になることが明らかとなっています(図2、図3)。


図2.野生型(左)に比べて著しく小さい精巣となり、不妊となります(右)。

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図3.ヒストンを欠損すると精子形成不全となり、精子が全くない無精子症を呈します(右)。

正常だと精細管の中に生殖細胞がびっしりと存在しますが(左図)、ヒストンを欠損すると生殖細胞が失われ、精細管の中がすかすかになります。

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本研究成果は、2017年1月18日 米国の学術誌「Cell Reports」オンライン速報版に公開されました。

男性不妊症(無精子症)の原因の一端を解明:生物界で広く保存されたヒストンの異型種が精子幹細胞の機能に必須であった!|学校法人近畿大学のニュースリリース
男性不妊症(無精子症)の原因の一端を解明:生物界で広く保存されたヒストンの異型種が精子幹細胞の機能に必須であった! …

ついに無精子症のメカニズムが細胞レベルで徐々に明らかにされてきていますね。
今後の不妊治療への応用に期待です。

ちなみに、精子がなくなってしまう原因はいろいろとありますが主に次の二つとされています。

  • 一つは、「精路通過障害」です。

精子が通る道に障害があるケースですね。
これは突発的、科学的、免疫的な要因が関与して起こります。

  • 二つ目は、「造精機能障害」です。

精子を作るメカニズム自体の障害ですね。
無精子症の方の80%に見られます。

この他、クラミジアなどの精路感染、副性器機能障害、制欲低下、EDなどの性機能障害があります。

たとえ無精子症であっても子どもを諦める必要はない

無精子症だったとしても、
子どもを絶対に諦めなくてはならないということではありません。

不妊治療を専門とするセントマザー産婦人科医院では、たとえ無精子症であっても人為的な方法によって妊娠させる治療をおこなっています。

受精させる際に使用するのは、丸い円形精子細胞です。
円形精子細胞は精子がまったくない人でも、約半数はもっている精子になる前の細胞のことです。

円形精子細胞の遺伝上の能力自体は、通常の精子とあまり変わりません。
卵子まで泳いでいく手段(尻尾)がないというだけの違いです。

治療ではこの円形の精子細胞を人為的な方法で、卵子に直接注入します。成功確率は1/4ほどです。

written by 執事

次回も引き続き、無精子症の治療について掲載していきます。