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結婚状態の変化と、その後の脳卒中発症リスクとの関係性1/1

婚姻状況の変化と、脳卒中発症リスクについての新たな研究結果が2016年3月に発表されました。本調査結果は岩手県二戸、秋田県横手、沖縄県宮古などの9保健所管内にお住まいで、研究開始時に既婚であった40~69歳の男女約5万人の方々を平均約15年間追跡したものです。

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【研究の背景と内容】

婚姻状況の変化は、健康状態に影響を与える重要な要因のひとつです。

一般に、結婚状態にある人は、結婚状態にない人(離別・死別)と比較して、健康状態が良いことが報告されていますし、婚姻状況の変化は循環器疾患の発症リスクを上昇させることも報告されています。

しかし、現在までに脳卒中発症リスクとの関連、とくに「脳卒中タイプ別の検討」は、ほとんどおこなわれていません。

そこで本研究では、既婚から非婚への婚姻状況の変化が「その後の脳卒中発症のリスクにどのような影響を与えているか?」を分析し、その関連が居住形態や仕事の有無によって変化するかどうかを検討しました。

今回の研究では、研究開始5年前に配偶者と同居していた方のみを対象としています。
研究開始時の婚姻状況から婚姻状況変化『既婚(配偶者と同居)→非婚(配偶者と同居していない)』の有無を特定し、その後の脳卒中発症のリスクを算定しています。

【研究結果】

2,134人の脳卒中発症が、平均約15年間の追跡期間中に確認されました。

調査開始時期に婚姻状況変化がある人ほど、脳卒中を発症するリスクが高い傾向が確認され、とくに、脳出血のリスクで強い関連がみられています(図1)。これらの関連に性別の差は見られていません。 

結婚状況の変化,死亡確率、脳卒中発症リスク,就労,関係性

図1.婚姻状況の変化と脳卒中発症リスク

婚姻状況の変化が、脳卒中発症リスクを上昇させる理由」として、配偶者を失うことによる生活習慣や精神状態への変化が考えられます。
これまでの先行研究により、配偶者を失うと飲酒量が増えたり、野菜や果物の摂取が減るというような食生活の変化があることが報告されています。

また、心理的ストレスレベルが上昇し、生活を楽しめなくなる傾向にあることも示されています。このような婚姻状況の変化により起こる様々な変化が、「脳卒中発症リスクを上昇させているのではないか」と考えられます。

就労の有無により婚姻状況の変化と脳卒中発症リスクの関連は異なるか?

次に、これを就労の有無別にみてみました。

結果、無職の女性の脳卒中発症リスクは高く、特に婚姻変化があった無職の女性のリスクは婚姻変化のない有職の女性の約3倍にも上っていました(図2)。

男性では無職者が少なく、統計学的に意味のある結果を導くことができませんでした。 

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図2.就労の有無による婚姻状況と脳卒中発症リスクとの関連(女性)

今回の研究では、ベースライン時の婚姻状況、居住形態、就労状況等などの要素が、人によっては研究期間中に変化している可能性があります。その点について考慮することはできていません。

ですが、日本においてこれまで「婚姻状況の変化と脳卒中発症リスクの関連」を示した疫学研究はなく、また、「その影響が個人の居住形態や、就労状況によって異なる可能性」を示したものはありませんでした。

婚姻状況の変化と、脳卒中発症リスクの全体的な関連では性差がみられませんでしたが、就労の有無や、居住形態の変化による影響において性差がみられるということは、今後の脳卒中発症におけるリスクの高い者を把握する際には、その人をとりまく社会環境も考慮する必要性があることを示しています。


『出展』